ネパールde浦島太郎
10年半の日本生活を終え、帰国した(元)留学生の記録。
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dipsky

Author:dipsky
10年半の日本生活を終え、
ネパールに戻って参りました
シャキャ・ディプです。
専門は教育社会学ですが、ここでは
日々のネパールでの奮闘を記録しています。

Email: dipskyjp@gmail.com

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ネパールにおける暗記教育の背景(2)
ネパールにおける暗記教育の背景(1)では、
その現状と弊害をNepallifeさんの記事をもとに説明した。
この記事では、具体的にこの暗記教育の背景にある要因について
少し掘り下げておきたい。

教育は教員なり!?
教育は教員によって成り立っている。
(もちろん、そのほかカリキュラムなど重要な要素もあるが)
ネパールが近代学校教育を始めたのは1950年代から。
紆余曲折があり、実質的に「民主的」な学校教育が始まったのは
1990年からと言っていい。
このような状況があり、十分な教員養成ができておらず(また政治的任命があるため)
ネパールでは質の良い教員不足が深刻である。
現在、公立小学校の約5割が中学校卒。
しかも、そのほとんどが中学校卒業試験(SLC)で6割以下の得点を獲得している者。
それに、彼・彼女らへの現職訓練は不十分。
最近になって、漸くほとんど(98%)の教員に10か月の現職訓練が
施されたが、それが実際に教室に使われている形跡は50%しかないという
研究結果が出ている。
訓練不足の教員にとっては、教科書のままの暗記教育をした方が「楽」である。


学歴主義:SLC中心の教育
しかし、必ずしも「楽」だから暗記教育に重点を置いているわけでもない。
学歴主義と評価方法が複雑に交わり、このような暗記教育につながる一要因になっている。
ネパールでは、中学校卒業試験(SLC)が「鉄の門」と名付けられ、重要視されてきた。
確かにSLCの結果で人生が左右される。
SLCで6割以上得点しなければ、社会で成功するエリート職にはつけない。
(例えば、エリート職とされる医者・エンジニアの理系に入るには
6割以上の得点が求められる。最近は、得点だけではなく経済力も問われる。)
そのため、初等教育の段階からこの試験を意識した教育に重点が置かれる。
徹底して、暗記の訓練が毎日の授業や毎年3・4回の試験を通して行われる。
SLC試験ではいかに教科書通り一字一句を書いているかが重視されており、
余計に暗記教育への重点が高まる。
(だから、カンニングもかなり存在する。)
なので、私立学校でもSLCでの好成績を目指した暗記教育へ重点おいている。
(ちなみに、私立学校の教員は学力が明らかに高い・訓練を十分に受けた教員でもない。)


「間違った学力主義」
おまけに、「間違った学力主義」が社会に根を潜めている。
というのは、学校に行く→読み書き計算ができるというのは
もちろんのこと、いかに「難しい」ことを学校で勉強しているかを
重要視している。子どもの発達段階について、親も知らなければ
十分把握している教員も少ない。
特に、このような発達段階の無視は、私立学校において深刻である。
少なくとも、公立学校では全国カリキュラムでいくぶんこれへの配慮がある。
私立学校では、親の要望というより、親へいかに「私たちの学校はちゃんと教えています。」
ということをアピールして、幼児教育(3・4歳)の段階から
ネパール語・英語の文字を徹底して詰め込まれる


今後の展望
問題山積のネパール式暗記教育だが、実はこのような段階は近代教育を始める過程でどの国も直面すると思う。
ネパールでは、近代化が遅れており、様々な問題がいっきに由来しているだけである。
援助団体の要請もあり、実はすでに児童中心主義への移行が促進されている。
(また、都心部の中産階級以上では高価なモンテッソーリ教育もかなり人気。)
教員への訓練もかなり児童中心主義に重点おいている。
また、教員の質向上のため、現在、中卒ではなく高卒が初等教育の教員になる要件にしている。
さらに、暗記教育を温存するSLCを2015年までに高校卒業試験に変更し、
暗記中心の教育からの脱却を目指している。
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コメント
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[2011/06/08 01:11] | # [ 編集 ]

ネパールの教育制度の概要
現在、ネパールの学校教育改革が進められており、従来の教育制度から新たな教育制度へ移行しようとしています。
なので、ネットの新・古情報で混乱されているかと思います。
簡単にまとめると、
従来のネパールの教育は5(小)-3(前期中)-2(中)になっていました。
(高等中等は、昔は大学教育相当。学校教育とは別の組織が管理)
この10年間の学校卒業試験としてSchool Level Certificate(SLC)が位置付けられていました。

しかし、新制度では2015年以内に、
ネパールの教育制度を8(基礎教育)-2(中)-2(高)にする予定です。
これに伴ってSLCも、
12年間の教育の後に、移行する予定です。
SLCで暗記教育をはじめ様々な問題が指摘されているので、
この改革を機にSLC試験の改善も目指されています。
[2011/06/08 15:25] URL | dipsky #- [ 編集 ]

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[2011/06/09 18:04] | # [ 編集 ]

暗記教育の背景(2)に思う
「暗記教育の背景にある要因についての掘り下げ。」
的を射た、大切な視点・分析だと思います。

そのほかにカリキュラムなどの重要な要素があっても、
「教育は教員なり!?。教育は教員によって成り立っている。」
その通りだと思います。

実質的な「民主的」学校教育が始って、20年が経ったネパールの、
① 「十分な教員養成ができておらず、質の良い教員不足が深刻である。」
② 「現在、公立小学校の教員の約5割が中学校卒。」
③ 「そのほとんどが、
   中学校卒業試験(SLC)で6割以下の得点しか獲得していない者。」
④ 「公立小学校の教員である、彼・彼女らへの現職訓練は不十分。」
⑤ 「最近になって、漸くほとんど(98%)の教員に、10か月の現職訓練が
   施されたが、それが実際に教室に使われている形跡は、50%しかない。」
という、(公立)学校教育の現状。

教員の質やサポート体制・自己教育力の問題、学歴主義や評価方法・SLC中心の教育の問題に由来する、
「徹底した、教科書のままの暗記教育」が横行している、学校教育の現状。

特に「鉄の門・SLC」の結果で人生が左右され、
SLCで6割以上得点しなければ、社会で成功するエリート職にはつけない。
という、ネパール社会の現状。

『ニワトリが先か、卵が先か。』ということになるかもしれませんが、
「初等教育の段階からこの試験を意識した教育に重点が置かれる。
徹底して、暗記の訓練が毎日の授業や毎年3・4回の試験を通して行われる。
SLC試験ではいかに教科書通り一字一句を書いているかが重視されており、
余計に暗記教育への重点が高まる。
そして、「鉄の門・SLC」の結果で人生が左右される。」
という。悪循環を変えるシナリオは、そう簡単ではなさそうです。

SLCでの好成績を目指し、暗記教育に重点を置き、「鉄の門・SLC」で好結果を生んでいる私立学校でも、
「その教員は学力が明らかに高い・訓練を十分に受けた教員」でもなく、
かつ、「公立学校より、よい条件で勤めているわけでもない。」ですね。
(昨年度訪問・見学させていただいた私立学校では、明らかに公立学校より
 条件が悪く・不安定な勤務実態のように見受けられました。)

「間違った学力主義」について
「間違った学力主義」の背景には、「学校教育の主人公は大人である」
という、ネパールの考え方や現状があると思います。
学校に行く→読み書き計算ができるということは、
明らかに子どもの未来(ネパールの未来)のためなのですから、
「学校教育の主人公は子どもである」はずですが、
大人の側の論理や利害に元づく教育が、
① いかに「難しい」ことを学校で勉強しているかを重要視している。
② 子どもの発達段階について、
  親も知らなければ十分把握している教員も少ない。
という状況を生んでいるのだと思えます。

私立学校において、このような発達段階の無視が深刻であるというのは、
(そのままでは、私立学校の明るい未来はないとも思いますが、)
結果主義・商業主義優先の私立学校としては、当然の帰結だろうと思えます。

 親に、いかに「私たちの学校はちゃんと教えています。」
ということをアピールするために、
(子どもの発達段階や招来ことを考えず、)幼児教育(3・4歳)の段階から、
ネパール語・英語の文字を徹底して詰め込んでいるという状況を、
今夏のネパール訪問の機会に、直に見聞したいと思います。
セッティングが可能でしたら、お願いします。

今後の展望について
「問題山積のネパール式暗記教育だが、実はこのような段階は、
 近代教育を始める過程では、どの国も直面する。」
「ネパールでは、近代化がアンバランスに進んでいて、様々な問題が一気に顕在化 しているだけ。」
その通りですね。

そして、それを何とかしようとしている、
シャキャさんのような人々が(今はまだ、点でしかありませんが、)
居るのですから、ネパール教育の未来には、希望の光が射しています。

そして、
(援助団体の要請もあり)実はすでに、児童中心主義への移行が促進されている。
また、都心部の中産階級以上では高価なモンテッソーリ教育もかなり人気。
教員への訓練も、かなり児童中心主義に重点置いている。
また、教員の質向上のため、
現在、中卒ではなく高卒が初等教育の教員になる要件にしている。
さらに、暗記教育を温存するSLCを2015年までに高校卒業試験に変更し、
暗記中心の教育からの脱却を目指している。
などの材料も、明るい兆しですね。

シャキャさんは、ネパール教育・シャキャさん自身の双方にとって、
よいタイミングで帰国したと言えそうですね。
[2011/06/10 21:56] URL | やかちゃん #- [ 編集 ]


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